アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

 5%の壁を越えろ!パンの新しい流通の可能性を探る

ナショナルデパートの私的研究機関「秀島総研」所長のヒデシマです。今回は秀島総研の記念すべき第一回目のレポートを発表いたします。ナショナルデパートにおける市場調査および研究結果なので、他の業種や製パン製菓業界の方にはまったく意味をなさないという恐怖のレポートです。21世紀の役立たずを自称している組織なので、まあ、そのへんはいつも通り生あたたかい目で見守ってやってください。

かなり悩んでます。おかげで、また髪が薄くなってます。

何を悩んでいるかと言えば、まあ、新たな出店もあるし、スタッフの増員もあるし、ワイフとデートに行けないというのもあるし、女子大生やOLにモテたいのでやっぱり痩せなきゃなというのもあるし、痩せたところでイケメンになる保証が無いのでやっぱ無駄かなというのもあるし、でもやっぱり女子大生やOLと遊ぶという男子一生の願望があるし、でもワイフに怒られるからそんなことを考えないで仕事をしようと思ったりするし、新たな出店もあるし。。。

まあ、意味が分からない流れになっているのですが、ネット通販というものを今一度見直してみようということで、ここ1ヶ月くらい時間が許す限り考えいるのです。実店舗で人気のパン屋が必ずしもネットで売れるということでもなく、ネットで売れているということが実店舗への誘導に寄与するかと問われればそれは言うほどないというのが現状です。これは経験のある方なら分かることだと思います。地方に本社を持ち、ネット通販をやり、実店舗を首都圏にも増やしたというレア事例として料理王国でも意見を書かせてもらったのですが、僕が今後ネットとリアルの両極のサイトでどのように立ち振る舞うかというのは、おそらく新しい食品製造小売りの指標にもなり得るのではないかと思ったりしています。(大げさだけどね)

で、東京に店を出して1年経過してみて、いろいろとデータも揃ってきたので、この辺で一発オモシロ企画を立ち上げようかと考えています。詳しい内容はフライングできないので言えませんが、結構なイカレ具合です。いつも通り。

どんなパンを主に買うか?ナショナルデパートアンケート

で、タイトルにもありますが、5%の壁を越えろ!ということについて。

先日ラジオ番組でアンケートを取らせていただいたんですが、1番多いのが菓子パン、次いでほぼ同率で食パン、総菜パンと並びます。その他というのがありますが、これはおそらくベーグルとかも含まれた数字だと思っています。で、ナショナルデパートのカンパーニュドイツパンはどこにカテゴライズされているかと言えば、これは確実に「その他」の分類に入っているのでしょう。主に買われるパンの7%以下ということです。食パンが製造量の半分を占めるという農水省の統計と微妙にずれているのは、岡山でアンケートをとったからではないでしょうか。岡山は菓子パンの強い地方有力メーカーがあるので、地域性としては砂糖を好む嗜好だと思います。

パンのおいしさ ≠ 小麦の風味、生地の食感、小麦の味わい

パンのおいしさ = 砂糖、油脂のもたらす大脳皮質で感じる幸福感

で、5%という数字は何か?というと、いわゆるハード系のパンの構成率(購入機会と置き換えても良いと思います)が全体の5%以下だろうということです。いろいろなリテイル店に商品構成を見に行くのですが、バゲットやカンパーニュなどの砂糖や油脂を含まない商品の構成率はだいたい5%~1%程度です。まったく無いお店もあります。これはおそらく売れないから製造しないという結果ですね。バゲットだったらラスクにすれば良いじゃないという向きもあるかも知れませんが、多くの場合リテイルに設置されているスライサーは食パンなどのソフトな生地を切る刃が付いているので、ハード系のパンは切れません。ハード系のパンは専用の刃の付いたスライサーで切ります。やはりロスが怖いのでそこそこの個人店だとバゲットは好んで焼きませんね。毎日売り切れるような有名店だとビジュアル上の要素(飾り)としてバゲットなどは焼きますが、売上に寄与するかというと、そうでもなかったりします。

で、5%という数字をふまえて考えてみましょう。ナショナルデパートの商品はほぼすべてハード系に属します。リーンとも言いますが、砂糖や油脂、牛乳、卵などの副原料を使用しないパンで100%の商品構成です。ということは、ナショナルデパートの商品は商圏人口の嗜好の5%にしか適合しないということになります。岡山市人口の5%(約3万5000人)がナショナルデパートの嗜好を考慮した商圏人口となります。とはいえ岡山市も合併を繰り返して広範囲なので、おそらくこの人数の半分以下でしょうね。2万人弱の人が一人あたり1,000円購入しても、年間で2,000万弱にしかなりません。これでは経営が成り立ちません。しかし全員が購入するわけではないので、実際はもっと少ないと思います。実際の数字を見てもわかるのですが、岡山店の売上の大半が県外からの集客となっています。(21年度)

じゃあ、菓子パン焼けばいいんじゃね?

という感じだと思うのですが、それだと存在意義自体が体をなさなくなってしまいます。ナショナルデパート自体が変わったパンを焼いている店として認識されているので、現段階で一般的なパン屋さんと同じ商品構成にしてしまうと、よけいにブレてしまうと思います。知名度や売上が増えたらスピンオフとして菓子パンや食パンを焼けば良いのではないでしょうか。専門性を強めるということで、いままでなんとか生き残ってきたという経緯もありますし。

じゃあ、どうやって売上伸ばすのよ?というテーマに移ります。

先に書いたハード系構成率5%という数字はおそらく全国共通だと思います。で、菓子パンや総菜パンをラインナップして人口の95%をカバーする、というのは現実的でないという前提として、どのように売上伸ばすか。この答えが東京出店であり、現在企画している関西出店だったりします。5%の人にしか相手にされないパンなのですが、これは岡山であっても、東京であっても、関西であっても同じなのです。日本全国どこに行っても確実に5%の人の嗜好には適合するのです。これってかなり強いと思います。アンパンやクリームパンは誰でも好きですが、どこのアンパンがおいしいかという個人的な好みで相対比較されますし競合も多いです。でもナショナルデパートの製品はすべてオリジナルなので絶対比較で5%の人に受け入れられる可能性があります。

実際に高円寺店の営業成績は順調に推移しています。東京にも5%の顧客が存在しているので、一般的なパン屋さんよりは少ないけれども確実に成果を出しています。逆に岡山店は県外顧客の岡山流入機会が無ければかなり不安定になります。遠方から来てくださるお客さんは意図的には増やしにくいです。だったら、商圏人口を増やすには分母を増やせばいいんじゃね?という単純発想で考えてみます。どこに行っても人口5%の顧客が存在しているのであれば、菓子パンを焼いて岡山市の95%(66万人)を相手にするか、カンパーニュ専門で日本全国の5%(650万人)を相手にするかというマーケティングが成り立つと思うのです。(強引だけど)

じゃあ、全国に出店だ!ということになるかといえば、そうはいきません。初期投資が必要になりますし、今の経営状態ではそんなに好立地に出店はできません。もし出店したとしても、リーチできる範囲が狭いと集客は難しいですからね。まあ、ここで通販が登場!というわけですが、これがもっとくせ者です。あまり語られませんが、楽天などでも売れている商品というのはマスコミにも取り上げられている商品です。一部マニアックな商品も通販を得意としていますが、現状はネット通販もマスの情報に大きく左右されています。ここでも5%という数字は存在していると思います。しかもネットでパンを買う人の中の5%なのでかなり厳しい数字です。マスの情報で動くのはどのサイトであれ95%の人たちです。一般的な嗜好を持った人たちなのです。

Googleで「ナショナルデパート」を検索すると、検索候補として「ナショナルデパート 評判」というのが表示されます。ネットでパンを購入する人、とりわけ30~40歳代の人は第三者の評価を異常に気にします。自分が気になったものを買うのではなく、誰かが良いと言っている物を買う傾向にあります。これを利用して食べログでも意図的に評価を操作したバズマーケティングが横行していますが、おおむね評価が高いのはやはりマスコミに登場したお店です。潤沢な資金を持つバックがついたお店はやはり強いです。

じゃあ、結局どうするのよ?ということですが、地域ごとに分散している全国の5%の潜在顧客に確実にリーチするにはやはり通信販売しかありません。実店舗の不利な条件として「距離」というものがあります。お店に行くまでの距離が遠ければ、買わないという理由付けには十分なのです。これは岡山店、東京店共によく耳にします。でも、だからと言って都内に数十店も出店することは不可能です。であればどのような方策を採用すべきか。一つのプランとして以下のようなものを考えました。

「都内に無料宅配サービス」

都内各所に折込サービスを利用してカタログを配布し、FAXやメールで東京店に注文いただいた場合、注文当日もしくは翌日に送料無料でお届けするサービス。

これは都内配送の場合、出荷当日もしくは翌日にお届けができることを利用したスピードのあるサービスです。都内にお住まいの方でお店になかなか行けない人たちにリーチすることができます。5%を効率良くすくい上げることができそうですね。でも送料を無料にすることで粗利は確実に下がります。件数を稼ぐ必要がありますね。それに広告を打つ必要が発生するので、損益分岐点は結構上がりそうです。

では、現状の資源で同様のサービスをするにはどうすればよいか?ここが今後の課題になりそうです。気軽に買えるというのは潜在顧客に対して有効なポイントなのですが利益を確実に圧迫します。ただ、総人口の5%という上限が決まっている孤独な業界なので、5%の100%を目指すしかありません。でも、日本全国の5%(650万人)を相手に独占的に商売ができると思えば、スケールとしてはとても魅力的です。ここはひとつ検討するべきだと思います。

ポイントをまとめます。

■ハード系のパンは人口の5%しかシェアが無い

■店舗を増やして売上を上げるのは現実的ではない

■潜在顧客を呼び込むには気軽さが大切である

■地域の95%よりも全国の5%のほうが対象は増える

■初期投資を抑えれば送料無料は可能性がある

以上です。

これを踏まえて新しいサービスの企画に入ります。どのようなサービスになるかは、発表したときのお楽しみです。ここでは5%人口にどのようにして確実にリーチするかを考えましたが、これはパンの新しい流通を考えることにもつながります。お店で買うのとも違う、通販で注文するのとも違う、遠方にいながらお店で買うような気軽さを実現できれば、活路は見出せるのではないかと思っています。