アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

たぶん物の価値なんてもう無いのだろうね。

写真は南千住の鰻の名店「尾花」の鰻を割いている様子。

社内で最近ホットな話題と言えば、どうやってパンをフェードアウトしていくかという話しなわけです。すごい手間がかかるわりに良い評価をつけてもらえないというジレンマに身悶えしつつグランパーニュを焼き続けてきましたが、そろそろ本当の潮時がやってきたのではないかいなということを感じるようになりました。

スタッフや僕も含め、みんなグランパーニュが大好きです。みんな大好きなので一生懸命焼いてくれたり一生懸命に売ってくれているわけです。歴代スタッフみんな一生懸命やってくれていました。しかし、いまだに評価されないのが現状です。やっていこうと思えばやっていけるわけですが、売れる場所と作っている場所の乖離がある以上、催事で全国を回ったり殺人的なスケジュールで製造をこなしたりしなければならず、それが体力や精神を蝕んでいくわけです。

卸しているお店の売り場を見に行くことがあります。同じ棚に並ぶ他のお店の商品で食パンを半分にカットしただけのものが400円で売られていてそれが人気だということです。僕のグランパーニュは六種類詰め合わせなので、焼いた後にスライスしてそれを六種類揃えて重量を合わせて袋につめてというめんどくさい作業が必要になります。価格は700円と1000円のものがあります。グランパーニュの詰め合わせが作業にすごく時間がかかります。パンを焼くよりも詰め合わせにする作業が大変なのです。でも、MDさんと決めたのは「色が美しく並んだパンをお客様に楽しんでもらいたい」という思いだったので面倒くさい作業もずっと頑張ってきました。

食パンを半割りにして袋に入れただけのものが400円、六種類のパンをきれいに切りそろえて詰め合わせにして700円、お客様は値段しか見ていません。スタッフが朝早くから頑張って大きなパンを丁寧にスライスして美しい詰め合わせを作っても、袋の中で蒸気でべちゃべちゃになった半割りした食パンに価格で負けてしまうわけです。

世の中にこれを提案していこう、という思いもありますが、今の僕に大切なのはストレス無く過ごすことです。嫌な思いをしてまでパンを続けていく意味があるのか、スタッフに大変な思いをさせてまで今のパンを続けていく必要があるのか。しばらく考えてみたいと思います。

先日南千住の鰻屋の名店「尾花」に行ってきました。思ったよりも客は並んでおらず、ゆったりと食事を楽しみました。あとでネットで見て知ったのですが、昨今の鰻の稚魚の減少で価格が上がり、「尾花」のうな重も価格が1.5倍ほどに値上がっていたそうです。でも、鰻の価格だけを見て高い安いというのもどうかと思うんですがね。スーパーではどこで割いて誰が焼いたか分からない鰻の蒲焼きもどきがいい値段で売られています。それに比べれば、注文を受けてから割いて焼いて蒸してという面倒くさい伝統的な調理を施してくれる「尾花」は安いと思うのですが、世間はそうは見ないのですね、ただ高ければ「高い」と騒ぎ立てるだけ。そういうのウンザリなんですがね。

たぶん物の価値なんてもう無いに等しいのでしょう。スーパーで260円の弁当を吟味するように鰻の名店の価格を叩くわけですから、もう何がなんだか分からない世の中になってきました。面倒くさいことを率先してやり、お客様に喜んでもらおうとする行為も、もはや無意味な感じになって来ているようです。

40代になり、情熱だけで突き進むことを続けるかどうか、なかなか悩ましいところでございます。