アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

僕の中のクリエイティブとは、悔しさを紛らわすために酒をあおるようなもの。

さっき鬼サブレーのパッケーデザインを公開したんだけど、こうやってブログで先行してデザインを公開するやり方も長く続けてる気がする。公開することで自分の中でもデザインの見直しができるし、思わぬ意見を頂くこともあって、それがまたブラッシュアップにつながるという良い連鎖が起きる。10年パンで足踏みしてたけど、やっと自分の土俵に戻れたかな。ちょっと強引だったかもしれないけどね。

で、鬼サブレーなんだけど、最初は他のデザイナーにお願いしようと思ってた。ナショナルデパート創業以来初のデザイン外注という、これでオレもイッパシの菓子製造メーカーになれるぜまったくチクショウ♡と意気込んでたんだけどね。いま東京なんかで売り出し中の30代のデザイナーで、かなり忙しくてたくさんの依頼を抱えてて、ウチと同じように県内でお菓子を製造販売しているメーカーの依頼もあるみたいだった。そのメーカーは年間30万個出荷してるらしい、ウチなんかももたん単体で年間10万個ペースしかない。

コンセプトから味までデザイナーが関わった商品というものを作りたかったんだよね。僕じゃなくて違う誰かが考えたものを作りたかった。ガン保険の金もまだあったし(もうマイナスでサラ金地獄だけど)デザインを外注してやるには今しかないというタイミングだった。お土産メーカーというのは何代も続いた老舗が多いから設備だって揃ってるし資金だって潤沢にある。ウチは稼いだ金の全部を次の新製品につぎ込んで回収してまた突っ込むという自転車操業だから、企画からリリースまでをとにかく早くやらんと資金が持たない。時間にも金にも余裕が無い。

そんなとき、二回目か三回目の打ち合わせのときにデザイナーが連れて来たパートナーが二日酔いでね、打ち合わせの途中で何度もトイレに行って吐いてたのよ。まあ、若いし、そういうこともあるのかな~と気にしないようにしてた、それよりも早く商品化して現金化しないとウチは立ち行かなくなるし、まあ百歩譲って二日酔いで打ち合わせに来ても良いから早く仕事を仕上げたいという気持ちの方が強かったし。

で、しばらく時間が開いてそろそろデザイン上げないと資金が無くなるって言うタイミングで連絡した。もう時間がないから最初のリリースは僕がデザインをやるから、後でリニューアルという形で関わってはどうかと打診した。すると相手からとりあえず見せれるものを持っていきますと返事が来たので会うことにした。結果、出来上がってきたものを見て、ああ、こりゃあ自分でやらんといかんなあと思った。結局事務所に帰って半日で鬼サブレーのイラストを描き上げた。

誰が悪いわけじゃない。そりゃデザイナーだって忙しいし、そりゃ規模の大きいとこの仕事をする方が良いに決まってる。僕が若い頃、前職の時に二日酔いで打ち合わせに行ったことは無いし、途中経過の報告で提出するものはちゃんと出力屋で本紙に近い紙種を選んで出力して持って行ったし、時代が変わったのか、僕が間違ってるのか。彼らだって大きな仕事の打ち合わせに二日酔いで行くことなんか絶対に無いだろうし、経過報告でもちゃんと見せられるレベルのものを作っていくだろうと思う。

誰が悪いのかと言えば僕が悪い。僕が老舗の二代目とか三代目とかで資金にも時間にも余裕があって有名であれば、彼らだって少しは態度が違っていたかもしれない。結局はそういうことなんだろうな。若い頃は有名な会社、規模の大きな会社の仕事を取るのが嬉しくってたまらない。それがモチベーションにもなる。だからウチみたいなチンケな創業者なんて誰も相手にしてくれない。だから結局は自分でやらんといかんようになる。神様から「おまえみたいなクソはずーっとそうやって一人でものを作ってりゃいいんだよクズが」と言われているような気がした。

すげえ悔しかった。すげえ悔しいけど、僕は作らないといけない。悔しがっても新しいものが出来るわけじゃない。とにかく作らないと始まらない。「ももたん」発表以降、いろんな人から褒められることが多くなった、多才ですねえとか凄いですねえとか、でも僕なんかクソみたいなもんよ。バカにされたり足蹴にされたりそうやってクソミソに扱われて悔しい思いをして、その悔しさを紛らわすためにものを作っている。僕の中のクリエイティブとは、悔しさを紛らわすために酒をあおるようなもの。酒を飲んでクダを巻くように、かわいいキャラクターを描きながら「あいつらぶっ潰してやる!」とボソボソと呟いている。それが僕の中のクリエイティブという言葉の意味になっている。