アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

僕がどうしてバターをやめてドライケーキブランドを作ったのか。

 

ということで、

バター以外のブランドがやっと立ち上がりました。

 

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冒頭の画像がそれで、美と気品をテーマにしたドライケーキの新ブランドです。

僕の食品仕事の最終形ともいうべき完成度、最近流行りの「かわいい」系のキャラクターものスイーツとは真逆なブランディングです。主にテナント出店や法人需要を見据えてデザインしました。

最高傑作です。

とここまで気分よく書いてますが、ついに会社のキャッシュが尽きました。

じつは、現金が尽きるというのは5年おきに起きるんですが、そのたびに起死回生のヒット商品を飛ばしてギュイーンと上昇して、また崖から突き落とされるというのを繰り返しています。

今回はそういう話。

 

というか、書いてて5千字超えちゃったので、経緯をすっ飛ばしたい方はスクロールしちゃってくださいね。

 

さて、

僕は昨年10月にバターをやめると宣言していました。

しかし、それからいろいろ試しては失敗しを繰り返してお金も無くなってきたところで、つい2週間前にやっと形になったので女王製菓をリリースしたという感じです。

2年前に左右の脳梗塞をやってしまってから(年齢もある?)、やはり処理能力が落ちているようで、バター以外の新ブランドの解をどう導き出すか、なかなか答えを導き出すことができなかったんですよね。

で、この度やっと非バターブランドが形になり、バターをやめようと思ったきっかけとかあまり詳しく書いたこともなかったなあと思い、もうこれが最後のブログになるかも知れないということで、経緯を残しておこうと思って書いてます。

いろいろ反省も含めて。

バターをやめようと思った最大の理由は、岡山工場のスタッフに裏切られたということです。裏切られたと書くと、何やら悪意を持ったスタッフに悪いことをされたとか想像するんですが、そうではなくて、スタッフにまったく悪意は無いまま10年以上ジワジワと会社の肉と骨を削り取られたという感じなのです。

岡山工場にはスタッフが二人いて、それぞれAさんBさんとしましょうか、パンの時から働いてくれている信頼のおけるスタッフでした。パンも、ももたんも、カノーブルも、ずっと二人のスタッフが一生懸命に作ってくれていました。

Aさんは働き者で、BさんはAさんを手伝って支えるという役目は、自然とできていたように思います。スタッフが二人しかいないので、売り上げが上がるたびに商品をどんどんブラッシュアップして、作りやすい製法に変えたり、東京工場で半完成品までを作って、岡山工場で最終製品に仕上げるなど、さまざまな努力をしてきました。

しかし、あるとき事件(というか問題)が起きました。

バターの売上はすさまじく、作っても作っても追いつかず、お客様をかなりお待たせしていました。そこで、このままでは駄目だと思い、岡山工場に数千万円の規模の設備投資を行いました。

ウチの規模では破格の投資です。

しかし、新しい設備の稼働開始してすぐ、スタッフが機械を壊してしまいました。報告を受けてすぐ岡山に飛んで行って確認すると、人の手ではビクともしないようなパーツがぐにゃりと曲がっていました。AさんもBさんも、「気がついたら曲がってました」と言いました。

東京から飛んできた機械メーカーの担当も、これだけの破損して音も出なかったのは考えられないと言いましたが、まあ、しょうがない、早く機械を動かさないと損失が出るからと、復旧を急いでその場は収まりました。

ほどなくして、AさんBさんに加えお手伝いのCさんも招集して、サブレ生地を200kg仕込む日がありました。200kgの材料を、20kgのボウルで10回に分けてミキサーで撹拌するんですが、なぜかABCの3人は200kgの材料を20kgのボウルに一度に押し込もうとして数時間格闘していました。

僕に連絡があったのは夕方前、ミキサーが回らないという相談。現場の写真を送ってもらうと、そこには再生不能な200kgの材料の残骸が。

金額にすると20万円分以上もの材料が一瞬で廃棄になりました。

人件費も考えるとたった一日で30万円の損失です。

どうしてそうなったのかは分かりません。200kgの材料は、どう見ても20kgサイズのミキサーボウルには入らないのですが、3人とも何も疑わず首をかしげながら材料を押し込んでいたようです。僕が送ったレシピには20kgの生地と指定してあったのですが。

このタイミングで岡山工場に監視カメラを取り付けることを決めました。

心の中にモヤモヤしたものは残りましたが、工場を動かし続けなければいけないので、損失も呑んでいくしかないと一応は納得するようにしました。

と、しばらく経って、

Aさんから悲痛な声で連絡がありました。

「人を増やしてください」

設備が揃ったのに人が足りないのか、不思議に思いましたが、僕はすぐに募集をかけてスタッフを増員しました。

すると不思議なことが起きました。商品が作れ過ぎちゃうのです。

それも異常ともいえるレベルで商品が大量生産されました。それまで発送が間に合わなかったのに、あっという間に製造がオーダーを超えてしまったのです。

すると、すぐに余剰在庫がたまり始めました。

余剰在庫というのは恐ろしいもので、今回みたいに急激に製造能力が上がってオーバーすると、販売に負担がかかります。スタッフをすぐにやめてもらう訳にもいかないので、製造は止まらずに進んでしまう。在庫を積む冷凍スペースにも限りがあるので、安値でもいいから捌かなきゃいけなくなるのです。

いわゆる安売りです。

そうしているうちにブランド価値が毀損してしまい、売り上げは徐々に落ちて行きました。

とはいえ、会社が傾くほどではなかったので、そのまま続けていけば良かったのですが、ここで大きな問題が発覚します。

スタッフの人数と製造数は密接な関係があって、一人当たりの製造能力と習熟度と稼働時間で製造数はすぐに導き出せるのですが、それがどうも合わないという結論に至り、監視カメラで岡山工場を一日観察してみることにしました。

するとどうでしょう

Bさんが全く働いていなかったのです。

働いていないというのは語弊があるかもしれません。ただ、Bさんは慌てた様子で右往左往しているだけで1日が終わっているのです。もしかしたら10年間ずっと右往左往していたのかもしれません。

僕はAさんに聞きました。

「Bさん、商品を作ることができるの?」

Aさんは言葉を濁しながらも

「Bさんは頑張っています」

と繰り返すばかりでした。

そこで、当時よく売れていたバターケーキをBさんに作ってもらうことにしました。僕は監視カメラで見ることにして、AさんはBさんを手伝わないようにと伝えて。製造できるかどうかテストですね。

テストがスタートしてすぐに僕は愕然としました。

Bさんは卵黄と卵白を分けることができなかったのです。やったこともなかったようです。10年間、卵白と卵黄を分ける作業なんて何百回、何千回もやってきただろうに、と思いましたが、考えるのをやめました。

とすると、

いままで作業をしていたのはAさん一人だったのか…

嫌な汗が出ました。

テストは進み、予定時刻を数時間オーバーしてバターケーキが完成しました。

結果はすべて失敗。

B品として割引で売れそうなものもありませんでした。バタークリームは分離していて、紙の容器の外側にはバタークリームがこぼれてべたべたと汚れていました。100個を作ってもらったので、販売価格で換算すると27万円の商品が廃棄になりました。

もちろんAさんBさん二人分の人件費もかかっています。

 

僕はAさんに聞きました。

「Bさんは商品を作ったことがなかったわけ?」

Aさんは言葉を濁しながら

「Bさんは頑張って手伝ってくれていました」

と答えました。

「今回バターケーキを作れなかったんだけど、もしかして、Bさんはバターケーキを作ったことが無かったの?」

僕が聞くと、

Aさんは、消え入るような声でこう答えました。

「バレちゃったか…」

 

ここで、僕はもう終わりだと思いました。

 

結論として、バターがめちゃくちゃ売れていた当時、AさんBさん二人で製造していたと思っていたのが、ほとんどAさん一人で製造していたことが分かりました。Bさんも手伝いはしていたようですが、足手まといになるBさんに作業を任せるよりはAさんが単独で動いた方が良いと判断したようです。

完全に僕の監督不行き届きです。

ただ、ここでAさんBさんの二人を責めようとは思っていません。

なぜなら、AさんもBさんも悪意があってやっていたわけではないからです。二人ともナショナルデパートを助けたいと思って10年以上頑張ってくれていたわけですし、Bさんの作業能力が劣るというのは雇用開始当初から分かっていたことで、それでも僕の会社のために頑張ってくれるという気持ちを買っていたわけです。

しかし、当然のごとく経営者としては失格。

Aさんは悪意があってBさんをかばっていたわけではなくて、Bさんを作業に加えると進行が遅くなって納期に間に合わないから敢えて一人で二人分の激務をこなしていた。Aさんは優しすぎるので、Bさんに対して意見を言えなかったんだろうと思います。

Bさんも悪意があって右往左往していたわけではなくて、BさんなりにAさんの手伝いを彼女なりに一生懸命やっていてくれていたんだと思います。AさんもBさんを咎めないし、僕も二人でうまくやってるんだろうと思っていたので監視していませんでした。

みんな悪意が無かった。

しかし、悪意が無いことが余計に損失を大きくして会社をつぶしてしまう結果になろうとしています。

結論からすると、設備投資は必要じゃなくて、Bさんの勤務様子を早めにケアしてスタッフを入れ替えていれば、設備投資の数千万円や納期遅延の機会損失などは防げたのではないかと思います。

結果として岡山工場は10年間でとんでもない額の損失を出していたということが分かり、当時は腹も立ちましたが、時間が経った今振り返ると、もっと早く何かできなかったのかと自分を責める日々です。

結局、岡山工場は一旦解散。

岡山工場の処分は高校の同級生(ラグビー部のキャプテン)のおかげもあって、高く買い取ってもらえたので本当に助かったのですが、数千万円かけた設備投資のメインである製造機械は稼働1年しか経ってないのに機械メーカーに百万円程度で買いたたかれ、すべては灰燼に帰す結果になりました。この時の機械メーカーに買いたたかれて踏みにじられた記憶はいまでも悔しさとして忘れられません。

当時はいろいろ愚痴っていましたが、今となってはもう過去の話です。

その後の僕はどうしていたかというと、完全に精神をやられてしまって完全休業状態。小さな会社でコツコツ貯めた数千万円が一瞬でパーになったのはさすがにキツかったです。

加えて心労も重なったのか脳梗塞を左右2度発症してしまい、休養を余儀なくされ、後遺症かどうか不明ですが、頭の回転がかなり遅くなった気がします。

そうこうしているうちにバター不足と価格の高騰。

これは気持ちを入れ替えるためにも、バター商品をやめてゼロから新事業を始めた方がいいんじゃないかと思いました。製造機械も全部処分してしまったわけですし。

ということで、いろんなことをやりました。

当然のごとく結果は全部失敗。

ヒット商品の出る前には失敗はつきものです。

そして、つい2週間前にたどり着いたのがドライケーキという世界。

思いついて3日後にはリリースしていました。
(脳梗塞の影響なんて無いんじゃない?)

おかげさまで、初動の売上はももたんやカノーブルを超える感じです。

が、しかし!

すでに会社のキャッシュはほぼゼロ。

 

数年前まで9桁近い現金があった銀行口座も今では66円に

 

売上を早期入金して凌いでいましたが、今月末でパンクします。(というかすでに支払い不能)

 

こんな状態でよく新ブランドなんかリリースしようと思ったな、と自分でも驚きですが、もう後が無いので、自分にできる最高のものを生み出そうとワイフと二人で連日徹夜で必死に作っています。

 

こんなのとか、

女王製菓のヴィクトリアとエリザベス。

1mm厚に27層のミルフィーユサブレに、コンフィチュールやキャラメルを敷いて、フリル状にメレンゲを絞って一晩かけて焼き上げています。

キャッシュが尽きてるのにこんな画期的な新商品を生み出すなんて気が知れないですね。

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こんなのとか、

いろんな形や味のドライケーキたち、全6種類が詰め合わせでも単品でも。

社用にご購入いただく件数も増えてきているので、本当にありがたいです。

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こんなかわいいものも

これは女王製菓のプリンセス。

女王製菓をパリのルボンマルシェで販売したり、ヴェルサイユ宮殿とコラボしたのもはるか昔の話ですが、あの頃のパリで奮闘した自分を思い出して書き上げた思い出の作品。

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ポーランドのクリームパイを日本で初紹介したのも今年に入ってから。

これも可愛いんですよね「カルパトカ」

商品ページにある評価コメントで「コンビニと同じやんけ!」を書かれていましたが、僕みたいな個性しか取り柄の無い商品を作ってる身からすると、コンビニの味と評されるのは名誉極まりないことなのです。もちろん、コンビニのシュークリームとは全く別次元の味の設計です。

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キャロットケーキも大評判です。

これはNY最新版のレシピ。オールドスタイルのキャロットケーキが苦手だった僕が毎日食べられるキャロットケーキを目指して仕上げました。スパイスが苦手な人も食べられるのはフルーツ人参を使っているから。甘さの中でも、根菜に熱を加えた甘さは別物です。

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ベイクドバターケーキなんて、自分で食べたさ過ぎて、わざと失敗してやろうかと思うほどです。バターシロップに浸け込んでるので、レンジでチンすると、飲めます。

ベイクドバターケーキは飲み物!

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ここまで嬉々として商品紹介してきましたが、

実際には、今月末で死のうと思ってたんですよね。

理由はキャッシュが支払いに足りないから。

原因は僕が女王製菓を思いつくのに時間がかかって、その間にキャッシュが減り続けて今に至ったわけなので自分のせいなんですが。

でも、実際にワイフに別れを告げていざ死のうとすると、怖くて死ねないんです。臆病者なんですね。死んでしまえば金も工面できるし後々のことは保険金で処理してもらってワイフには第二の人生を送って欲しい。そう思ってたんですが、

 

やっぱり死ぬのって怖いんです!!

 

大腸がんステージ3も、脳梗塞も乗り切ってきたおっさんだけど、現金が無いって言うことの方が怖いなんて、臆病者で意気地なしだと笑ってください。

女王製菓も、人生最後の傑作として生み出せたし、今月の最終日までは頑張ろうと決意して送料無料セットなんかも用意したんですが、現金が無いんです!

なんということでしょう、少しずつオーダーも入り、新規も常連さんも社用で使ってくれる会社さんも出てきたのに、現金が無いんです!

 

とにかく現金が無いんです!!

 

何ごとにも「遅い」ということは無い。今から努力すれば人生は間に合う!と思って生きてきましたが、けど、今回はちょっと時間がかかったのでみんな助けて。

女王製菓とかカノーブルのケーキをたくさん買ってください!

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恥を忍んで申し上げます!

支援もお待ちしています!

 

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法人第二営業部(102)
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