アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

最後の賭け

出店先の物件の契約まであと一日。

突然の母の翻意で事業計画の変更を迫られたわけだが、こいつがどうにも収支計画が立たないという事態に。現実的に可能なラインをどこに設定するか、そこが狂ってしまうと岡山の店も畳まなければいけない状況に追い込まれる。そこまで状況が悪化したのは母がゴネて上京しないということになって、最終的に僕とワイフが週末だけ店を開けるということになりそうだからだ。営業日数が当初予定の1/3程度にまで減るから、計画にゴーが出た時点の計画より収支予測がものすごく低いレベルに落ちてしまう。

試算書を見ながらワイフと二人ですごく話し合った。毎週一番安いチケットで移動して、木賃宿の煎餅布団で二人寝るくらいの試算でもギリギリになる。けっこうタイトなラインで予測を立てているが、少しでも下回ると数ヶ月しかもたないレベルだ。

二人でしばらくじーっとモニタに映る試算書を眺めていた。可能性は0.1%でもあるだろうというのが二人が同時に出した答え。うまくいく可能性0.1%。で、全部潰れちゃう可能性99.9%。潰れると分かっていて先に進むなんて、僕一人では良いけど結婚した身でそんなことを。。。けっこう悩んだ。ずーっと悩んでいたらワイフが話し始めた。

ここにいたら0%。ここを出ればたった0.1%でも可能性はあるじゃない。

ここにこのままいたら必ず後悔すると思う。

先に進んで失敗しても後悔しないんじゃない。

なんという良ワイフ。やっぱり女は強い。そうなんだ。最後に回ってきたチャンスなんだよな。なんてワイフの力強い言葉を聞きながら自分を力づける。そして家族全員集まって、収支予測のプリントを見ながら最後の話し合い。今までは許容範囲の中で失敗を収めてきたからなんとかやってこられた。でも、今回は失敗した時点で岡山の店も何もかも無くなってしまう。家族を巻き込む大騒動になるんだ。

数時間の話し合いの結果。全員一致で出店が決まった。ものすごいタイトな計画だが、姉も仕事の都合がつけば手伝ってくれる。新規で雇い入れはせず、当面は家族だけで無茶な状況を乗り切る。残り0.1%のチャンスだから、大切にしていきたい。明日はいよいよ契約だ。