アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

今年のテーマは「私、幸せになります」です。

あけましておめでとうございます。

三が日はずっと日本橋三越での催事用のパンの準備に追われていたヒデシマでございます。さて、毎年恒例の今年のテーマについてです。年初に思ったことやどう感じたのかということをその年のテーマにするんですがね、昨年はいろいろあった年であったことを踏まえて自分自身がどんな気持ちで2012年という年を迎えるのかと楽しみにしていました。

昨年は「何もしない」をテーマに一年を過ごさせていただいたのですが、行動目標に反して今までで最も忙しく移動距離もハンパなく過去最高額のパンの販売などという結果になり、自分の中では依頼された仕事は受けても自分から売り込む仕事はしていないよという言い訳をしながらも2011年をなんとか乗り切ったような気がします。個人的なことですと脊柱管狭窄症というありがたいニックネームが増え、要手術なのではないかという結構な重要項目が人生の年表に書き加えられたことが思い出に残っています。かなり深刻な神経痛に悩まされているのですが、これも業の引き起こす因果なのかと受け入れてせんねん灸に火を灯しております。

2012年という年を迎えるにあたって、仕事上はここが攻め時なのかと自分自身も考えておりましたし、そのための準備を昨年来みっちりと時間をかけてシコシコややり続けておりました。しかし新しい年を迎えてパンを焼きながら三が日を過ごしワイフと散歩したり酒を飲んだりいろいろゆっくりと話していると、つい大晦日まで追い立てられるように仕事に向かわされてきた自分の意識の角が取れ、ゆるやかに優しい気持ちに傾倒していくのが感じ取れました。自分でもどうしてそのような気持ちになるのかというくらい不思議な気持ちの変化です。

今年は年初からいろいろと重要な仕事のオンパレードです。初の経験となる三店目のオープンも決まっていて、過去の自分ならここで勝負とばかりに全力で大振りパンチを息が切れるまで繰り出していたのでしょうが、まあ、このへんでいいんじゃない?的な仕事に対するあっさりテイストの感覚が芽生えてまさかの展開なわけです。やりたいと思っていた事や作りたいと思っていた物、そういう何かを実現していったり現実の形にしていくという作業は、何も創造的に特殊な創意を必要としているわけではなく、粉骨砕身して自分自身をミンチにして取り組むばかりが能ではなく、経験で学んできた設計図に沿って最適なパーツを選んで組み上げていく創造的な流れ作業とでも言うべき仕事なのかなあと思うことがあります。

過去の自分が想像していた年刻みの将来の自分像を現実の自分が追い越すというのは、自分の予測が甘かったのか目標の設定が低かったのかは分かりませんが、あまりよくないことのように思ってしまい、何事も先走ってしまう傾向の強い自分の仕事の進め方についても、とにかくこれ以上に歩を進めるのを早めても時代からの承認は得られないのではないかというのは自明のことだと思うわけでございます。僕自身、人物の器以上の仕事や依頼は来ないと思っているのですが、だからといって大きな話が来たことで自分の位や価値が上がるとか、自分が他よりも優れているとかそういうことではなく「こんな仕事してる俺スゴイ」とかを匂わせて「いいね!」ボタンが押されて許されるのは30代前半まででございまして、もう30代最後の歳になろうかという僕にとっては、若い頃に「やりたかった仕事」が「やるべき仕事」になり、やがて「今やっている仕事」になり「他から求められる仕事」になってくるのは当然の事のように感じてしまいます。

それが時代からの要求なのか僕自身の欲望なのかは分かりませんが、求められていることを粛々と形にしていくのが仕事上の今年のテーマとなるに違いありません。おそらくは今までの四分の一くらいの力加減で二倍の結果を出すという仕事のやり方に切り替わっていくのだろうと思います。仕事は忙しくなる一方なのに仕事に対する力の入れ方を緩めようなんてどうして思ったのかというと、この三が日にパンを焼きながらワイフと一緒にゆっくりと時間を過ごしているうちに、出会ってから五年間こうやってじっくりとワイフの顔を見ることもなかったような気がしまして、仕事に追い詰められてワイフの顔もゆっくり眺められないような人生に何の価値があるのかと思った次第でございます。

仕事の面では重量四分の一で速度二倍というライトウエイトスポーツ的なスピード感でさらなる結果を出し、個人的には「私、幸せになります」をテーマに今年一年を「おいしい」と「愛してる」の二つの言葉だけで過ごしていける実りのある一年にしたいと思っております。

今年のテーマは「何もしない」です(2011年のテーマ)

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