アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

ふたつの絆のはなし。

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ちょっと久々に強烈な事件が発生しまして、普通ならSNSなどに書いたりするんですが、ちょっと深刻すぎてブログで面白おかしく書けないものかと頑張ってみます。たぶん暗くなるかもだけど。

 

 

知人や友人が多く華やかな人間関係を持つというのは多くの人が憧れることだと思います。それを総称して「人脈」と言ったりする向きもあるらしいですが、僕はあまり好きな言葉ではないのでその呼び方は使いません。

人は生まれによって与えられる「絆」というものがあります。両親、兄弟、親族、ご近所さんなどは生まれた時点で定められた絆ですよね、そして成長するに連れて学校の友達や恩師など、社会に出れば仕事の同僚や取引先の人物等々、さまざまな人間関係が形成されていきます。

僕はふたつの絆があると思っています。血縁から派生する生まれ持って“与えられた絆”と、自分が中心となって人が集まる“築いていく絆”です。

 

僕は両親ともにすでに他界し、姉は精神を病んで僕の会社の金を持ち逃げして姿をくらまし、親族も犯罪者や薬物中毒揃いという、“与えられた絆”に恵まれない人生を送っているために、人との絆を世間に求めなければいけませんでした。

血縁のないワイフと出会い、血縁のないスタッフらと仕事をし、血縁のない人たちと交流を持ち、自分の世間を広くしていきました。僕の中では家族とは世間であり、世間とは家族です。なぜなら、無条件の関係性をもつ基本的な絆である血のつながった親兄弟や親族がいないからです。

僕は与えられた絆に乏しく生まれたので、自分で築いた絆でつながった人たちを皆家族だと思って接するようになりました。人と人のことなのでいろいろとありましたが。

 

 

ここ数ヶ月、僕の人生後半で最大のターニングポイントがありました。20年ぶりに東京に仕事と住まいの拠点を戻すという決断、義母とワイフも東京に転居し、岡山と東京にふたつの工場拠点を構え、いよいよ十数年続けてきた事業の総仕上げに入るというタイミングです。

しかし一方で、マンションを建てて家賃収入でひっそり暮らすプランもあったし、アパートを何棟か買って家賃収入を得るという選択肢もありました。

でも、そういう考えに流れそうになったときに、お前は働いていないとダメだ、お前は物を作り続けるべきだ、お前は自分自身に投資するのが一番リターンが大きいはずだ、またもういちど秀島さんと夢を見たい、、、と言ってくれる人たちが僕のそばにいました。

 

その人達の言っていることが正解かどうかは分かりません。でも、僕のことをよく知っていて、見返りを求めることのない家族のような人たちが、みんな僕に自分の人生を生きろと言ってくれました。僕はそういう人たちに支えられて生きてきたんだなあということを実感しました。

この人たちはみな僕が大人になってから築いてきた絆でつながっているひとたちです。

 

 

昨日のこと

話は変わりますが、昨日、長い付き合いの友人の精神が壊れた様を目の当たりにしました。以前からその予兆はあったのですが、昼から酒を飲み、ろれつの回らない口調で意味不明なことを延々とまくし立てていました。

僕の会社が新しく作る工場の物件が気に入らないと難癖をつけ、お世話になっている不動産屋に電話して「契約をやめろ」と一方的に言い始めました。どうしてそんなことを言うのかと聞くと、また意味不明なことを言うばかりで埒が明きません。

もう、今後の僕の人生の登場人物の中に彼はいないのだろうなと思いました。

 

彼は僕と同じ年ですが、ほとんどまともに働いたことのない人生を送ってきました。彼は僕と違って与えられた絆に恵まれていて、働かずとも生活できるだけの地所を持つ地主の家に生まれ、健在な両親の庇護のもとで暮らしています。ほとんど働かずに。

20年前はたくさんの友人に囲まれて楽しく暮らしていた彼も、20年経った今では彼のことを心から心配をする友人はもう誰もいなくなりました。

なぜでしょう、僕はこう考えます。彼は自分の力で人との絆を築けなかったからではないかと。

 

絆とは財産という言葉に置き換えることが出来ます。

与えられた絆は、与えられた財産に。

築いていく絆は、築いていく財産に。

 

僕は地を這い泥をすすって仕事をしてきました。彼はそんな僕のことを笑いました。くだらないと笑いました。僕はそれに反論しませんでした。僕の人生なんて本当にくだらない人生です。彼が生まれながらに得ているものを、僕は一生かかっても得られないかもしれない。そんなことのために毎日必死で働いているわけです。

 

彼とは20年の付き合いですが、その間に彼と僕の人生は大きく変わりました。

彼は与えられた絆や財産を減らしながら生き、僕はコツコツと絆や財産を築いてきました。その結果、彼は友人を失い、僕には心からの友人が残りました。彼は自分の殻に閉じこもり、僕は無限に世間が開けていきます。

 

どちらが良いか悪いかという話ではありません。絆というものにはふたつの種類があり、それは生まれながらに与えられた絆と、自分の力で築いていく絆、このふたつの絆があるというだけの話です。