アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

ナショナルデパートの新ブランドコンセプトについて。テーマは「官能」と「高貴」

四季のカンパーニュ、女王製菓、に続くナショナルデパート第三のブランドが完成しました。このブランドはパンやお菓子という狭義のものではなく、食品全体を視野に入れた新しいスタイルの商品展開を目指しています。ナショナルデパート創業の真の意味が込められたブランドと言っていいでしょう。

というわけで、9月に発売予定の新ブランドのコンセプトをちょっと早めに見せるという趣向です。形になる前の製品コンセプトは数人に言っていたり、デザインサンプルも数人には見せていたり、テイスティングもほんの数人には試してもらったんですが、それぞれ各方面の人たちにも好感触なようです。コンセプトとデザインとテイスティングを別々の友人や知人に公開することで、各業種に属す様々な人たちの反応や意見などをいただくことができて、製品化にこぎつけることができたわけです。口の堅い人たち、ありがとうございました。正式発表の前に各販売チャネルごとにプレゼンテーションをしていかなければいけないなあと思っています。

ということで、新ブランドのコンセプトの発表です。

コンセプトは、「官能」と「高貴」です。

CANOBLEブランドコンセプト

最初のキーワードは「官能」

官能というのは人の持つ「五感」によって得られる喜びというものだと思っています。「五感」とは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚と言われていますが、こういう「感覚」というのは特に性的な事象に顕著になりますな。人は服を脱ぎ捨ててしまえばそういった「感覚」から得られる喜びに我を忘れてしまうというか。でも、そうであっては社会生活を送ることもままならなくなりますよね、なので男子なら真っ昼間にそういう気を起こしてしまった場合、慌てて「ヤワラちゃん」の顔を思い浮かべるとかするわけです。ママでも金なわけです。それは冗談としてね、性的な官能の片鱗を残しつつそこからちょっとそこから離れてみようという人類の努力の結晶が芸術だったりすると思っています。人は享楽を追い求めるだけでは単なる波打つ肉の塊のような、人には思えぬような醜態を晒してしまうわけです。そこから一番遠い場所に人を運ぶために芸術があり教育がありという感じなのかなあと。何も制約が無ければ欲しがり続けるものが「官能」なのだとか勝手に位置づけています。

で、もうひとつのキーワード「高貴」

高貴といってもね、なんかあやふやな感じがするのですが。「気品」とか「品格」とかね、有り様とか、人の立ち振る舞いとか、すべてのものの居住まいだとかね、そういうものが「性的な享楽」から一番遠い対極にあることが「高貴」な感じするイメージだと捉えています。ようは、欲求の本質的な部分を隠すという行為ですね。まあなんですけど、立場的に高い位の人ほど奔放だったりするわけでね、ここにも人間本来の感覚というかね、隠していても心根では求めて止まないというね。イメージ的には「官能」を隠すために「高貴」であろうとして、また「高貴」な中にも「官能」をお求めてしまうという人間のもつ面白さがあるよね、みたいな。で、「官能」と「高貴」の循環の中に新しい価値が生まれるのではないかという仮説を基に新ブランドのコンセプトを立ててみました。

最近は、コストパフォーマンスを声高に叫びながら、意味不明の物に湯水のごとく金を使うとかね、高い価格を攻撃しつつ贅沢を楽しむという矛盾した消費活動が見られるんです。なので製品価値とかコストパフォーマンスとか、そういうものとは別の「官能」と「高貴」という切り口で新しい食品を提案していこうという試みでもあります。

CANOBLEブランドコンセプト

で、イメージし辛い二つのキーワードを、最近流行の「見える化」するとこんな感じですというものです。ちょっと品が有りそうな感じなんだけど、ちょっとソドミーな雰囲気もあったりとかね。飽食や不道徳な背徳感たっぷりの中に漢字で「官能」と「高貴」と書かれていますね。これは単なるイメージなんですが、こういった華奢な悪さも気品を形成するひとつの要素なのかなあと思っていたりします。

「官能の悦びを知った人類は、その醜態を隠すために気品や美しさを求め、この地上に芸術をもたらした。そして完成された芸術の中で最も高貴だと言われたものは、やはり人の官能の中にこそ秘められていた。」

まあ、食品のコンセプトからかなり遠ざかっていますが、もうだいぶ眠いのでね、意味がだんだん通じなくなってきています。「五感」という視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の中に、欲望とそれを隠す法衣のようなね、そういう感じを出したいわけです。

CANOBLEブランドコンセプト

で、以上の悪ぶったコンセプトをいざデザインに落としていこうという僕の努力の始まりなわけです。上のほうに描かれた大きな鍋のフタを二頭のライオンが押さえているという絵ですが、これは百獣の王である牡ライオンが二頭がかりで押さえなければいけないという、なにやら危険な鍋の中身だったりとか、俗人には食べさせてはならない秘密の楽園の林檎の実だったりするイメージです。果実の絵ではなく鍋を描いているあたりは、加工した食品ですよということの表現でもあったりします。

そしてブランド名なのですが「官能と高貴」というものも一部生かしていきますが、もう少し広義にするために英字表記することにしました。「官能」以外にも日本語の中で感覚から得られる喜びや感覚を表現する言葉を挙げてみました。以下がブランド名が決まった背景です。

「官能」「甘美」「感覚」「歓喜」「歓悦」などに含まれる「かん」

「高貴」「気品」などをイメージする単語「noble」(ノーブル)

「かん」+「ノーブル」=「can」+「noble」=「CANOBLE」

で、読み方は「カノーブル」です。

肝心の商品については、これといった限られたカテゴリーを決めません。第一弾として販売される商品群は今までに無いカテゴリーの創出だったりしますし、第二弾は定番の食品を新しくリプロダクトするのがテーマだったりします。いままですべての商品がナショナルデパート単体で企画製造販売を行ってきましたが、この「カノーブル」はそういった制約も無く、複数社で製造から販売までを行う可能性もありますし、そのあたりもフレキシブルに進んでいきたいと思っています。

ナショナルデパートの大きな方針として「新しいカテゴリーの創出」がありますので、ここは今後も押さえていきたいですね。そのための受け皿としての新しいブランドだと僕は思っています。今までナショナルデパートはパン屋さんというイメージだったと思うのですが、この新ブランドから本来あるべき姿へと形を変えていきます。今後も新しいものが次々と発表されると思います。なので、これはほんの始まりに過ぎないという感じですね。誰の真似もしない、そういう会社が一つぐらいあってもいいのではないかな、と。長々とすみませんでした。以後よろしく。