アイデアのスープのレシピ

アイデアのレシピ集

いつまでたっても慣れない朝がある。

今日から高松天満屋で催事出店開始。この初日がいつもドキドキする。初日の午前中の売上でその後の二週間の製造量がほとんど決まってしまう。あらかじめ注文していた材料が無駄になるかどうかもここで決まる。月末に資金がショートするかどうかもここで決まる。岡山店の売上額よりも多い額の材料を購入することになるので、初日午前中の売上に一喜一憂するのがいつもの光景。予想を超えれば製造のペースを早めるし、予想を下回ればスタッフに製造をまかせてスターバックスにコーヒーを飲みに行く。これもいつものことだ。

催事屋という連中がいる。このブログでもよく出てくる名前だ。彼らは賞味期限の長い商材を主に扱う。乾物、箱物。。。ケーキ類はすべてが冷凍で、販売直前に賞味期限のシールを貼り付ける。冷凍物は工場出荷後の保存状態がよければ半年以上まったく味が変わらない。催事期間で売れ残れば冷凍のまま次の催事現場に輸送される。この光景を何度も見て悔しい思いをしていた。OEMで他社に作らせて現場は派遣の販売員で売る。作った人の顔などどこにも見当たらない商品。それでも売れる。だから悔しい。

ウチはフレッシュなパンを並べるために毎日大量に焼いている。だから当たり前のように他の売り場の三倍五倍いや十倍の売上を出さなければいけない。有名シェフのプロデュース物の冷凍ロールケーキに負けたら終わりだと思っている。でも、もしかしたらスザンヌの母親がプロデュースしたロールケーキに負けるかも知れない。そういった悔しい思いも過去にはあった。

無名だが確かに売れる商品を作り続けるのは容易いことではない。でもそれをしていかなければ、この業界でナショナルデパートが生き残る方法は他にない。戦う相手はマスコミを使って知名度を上げた冷凍のOEM商品。不毛だけど、これが食品業界ってやつなんだな。冷凍菓子なら全国数カ所で同時出店が可能だが、ウチならせいぜい二箇所が限界だ。来週からは広島三越のバレンタインイベントが重なる。一日百万円分のパンをほとんど一人で焼かなくてはいけない。余って廃棄する可能性のあるパンを焼くのは精神的にもこたえる。でも、こうやって経験を重ねていかなければ先に進めない。

僕にはいつまでたっても慣れない朝がある。たとえば今日。あと数時間もすれば売上の一報が届く。パンがどうとか酵母がどうとかそういう問題ではない。いまは冷凍OEM食品に挑んで勝つのが精一杯の仕事だ。